ゲーオタ人生論

ゲームをクリアして考えたことの備考録

【ポケモンシンオウ考察①】やぶれたせかいとアイヌの地獄

ポケットモンスターブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール発売おめでとうございます!!!!!! 大変楽しませていただいております。

さて、久し振りのゲーム考察ですが、自分、BDSPを踏まえた上の「LEGENDSアルセウス」をめちゃくちゃ楽しみにしており……www.amazon.co.jp邪な動機ではあるのですが、いずれ訪れるアルセウスでの本気考察のため、今のうちシンオウ地方について個人的にまとめておきたいと思い、記事を書くに至りました。殆ど自分用の備考録ですが、楽しんでいただければ幸いです。

 

今回は、「やぶれたせかいとアイヌの地獄」です。

 

シンオウむかしばなしとアイヌの信仰を比べて

ミオシティのミオ図書館で読める「シンオウむかしばなし」をご存知でしょうか。ストーリーの進行上、ミオジム撃破後、ナナカマド博士に呼ばれるので、大抵のプレイヤーが読んでいるのではないかと思います。図書館の文献には他にも、シンオウ神話やトバリ神話もあるのですが、今回は「シンオウむかしばなし」を元に考察を進めていきます。

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 その①

うみや かわで つかまえた
ポケモンを たべたあとの
ほねを きれいに きれいにして
ていねいに みずのなかに おくる
そうすると ポケモンは
ふたたび にくたいを つけて
この せかいに もどってくるのだ

 その②

もりのなかで くらす
ポケモンが いた
もりのなかで ポケモンは かわをぬぎ
ひとにもどっては ねむり
また ポケモンの かわをまとい
むらに やってくるのだった

 その③

ひとと けっこんした ポケモンがいた
ポケモンと けっこんした ひとがいた
むかしは ひとも ポケモンも
おなじだったから ふつうのことだった

①での「ポケモンを食べている」という明確な描写。DPt発売以前からジョウト地方等でも、コイキングヤドンのしっぽの食用の話は出てきていますが、ここでの食は、もう少し生活に密接であるような印象を受けます。(骨を送る話は後述します)

コイキング等は「消費」である一方、シンオウ神話で語られている食は「共存」です。

それは、②や③でも顕著です。②はポケモンと人間が皮の有無はあれど「同種」であることを述べ、③においては、人とポケモンの結婚を例に挙げ、これまた「対等」であることを述べています。

あくまでこれは昔話であり、現代(仮にDP発売時の2006年くらいとしておきます)とは、異なった文化であることはゲーム内でも明らかですが、シンオウの昔にかつて通底していた文化なのでしょう。

さて、シンオウ地方は、言うまでもなく北海道を舞台にしたゲームです。

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北海道は元々、蝦夷地(これも本州から見た通称ですが)という場所でした。明治時代が始まった際に、開拓使という役所が設立され、本州の人々が蝦夷地を本格的に開拓した結果、今の札幌・小樽などの都市が生まれました。栄えた港街や炭鉱などの開拓の元ネタは、コトブキシティやミオシティ、クロガネたんこうやタタラせいてつじょにも見られます。

では、開拓以前の北海道に、人は住んでいなかったのでしょうか?

いいえ、もちろんそんなことはありません。旧石器〜縄文時代の北海道の人々は、本州同様、竪穴式住居に暮らし、狩りをしては縄文土器で煮炊きをする、狩猟民族として生活していました。しかし、中国からの稲作文化や仏教、金属器の伝来によって発展し、弥生時代以降、戦乱の世を経て、数々の幕府を築いていく本州の歴史とは異なり、寒冷によって稲作ができなかった北海道に、外来の文化は根付きませんでした。北海道は弥生時代を迎えず、狩猟・漁労・採集などを軸とした「続」縄文時代として、独自の文化を築いていくのです。

13世紀頃に成立し、北海道に根付く文化、それがアイヌ文化です。

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アイヌ文化については、折を見て、この記事の中でも解説していこうと思うのですが、漫画「ゴールデンカムイ」が、ちょうど明治大正期の北海道の話であり、アイヌ文化についての造詣が大変深い物語となっていますので、アイヌ文化の入門書として非常にお勧めいたします。(すみません、ただの販促です。このブログの記事の中でも、今後共大変お世話になります)

 

かつて、狩猟生活をしていたアイヌ文化ですが、その狩猟には独自の信仰が強く根付いています。

アイヌの信仰では、あらゆるものに「魂」が宿っていると考えられました。植物や動物など採集・狩猟の生活に深く関わり、人間に自然の恵みを与えてくれるもの、火や水、生活用具など人間が生きていくのに欠かせないもの、あるいや天候や自然災害や病気など、人間の力の及ばないものなどを「カムイ」(日本でいう神のようなもの)として敬いました。

カムイたちは、天上や山上、海中などそれぞれのカムィモシㇼ(カムイの世界)に人間と同じような姿で、喜怒哀楽をもって暮らしており、彫刻や刺繍などの手仕事をしたり、結婚して家庭を持ったりしながら、仲間たちと一緒に暮らしていると言われています。カムイは何らかの役割を担ったり、遊びに行きたくなったりすると、カムィモシㇼからアイヌモシㇼ(人間の世界)へやって来ます。その時に、人間の姿から、動物や植物、あるいは道具や自然現象などに姿を変えると言われています。ものがカムイなのではなく、カムイがものなのです。

この世界は、人間とカムイがお互いに関わり合い、影響を及ぼし合い、「対等」な関係を築くことによって成り立っていると考えられていました。このような考え方は、農耕を行わず、自然との関わりを深く持つ必要があった生活だからこそ、生きるために必要なものを手に入れたり、使いこなしたりするための知識やしきたり、天災や病気への心構えなどを表していました。まさに、カムイへの信仰は生きる知恵に直結していたのです。

このアイヌにおける「人間」と「カムイ」の関係性を基にして、シンオウむかしばなしの「ひと」と「ポケモンは書かれています。

シンオウむかしばなしその②は、まさに先述したカムィモシㇼからアイヌモシㇼにやってくるカムイの通りです。むかしばなしには森からやってくると書いているので、動物のカムイではあるのかもしれませんが、ならば、森に棲むポケモンと非常に等しいですね。(BDSPでは、ひでんわざで毎度、ご丁寧に野生のポケモンがやってきてくれます。ひでんわざ消去というメタ的なことを抜かせば、彼らこそ人間を助けるために姿を変えてやってきたカムイなのかもしれません)

また、その③についてですが、アイヌに伝わる散文説話の中では、人間とカムイが結婚した話が数多くあります。異類婚姻譚についての研究は数多くされているので、ここでは割愛しておきます。アイヌの散文説話の中には、異類婚が忌避されているものもあるようですが、シンオウむかしばなしにおいてはひととポケモンの普通の「対等」の論拠として、アイヌ異類婚姻譚を例に挙げているようです。

 

このように、ひととポケモンとの関係性は、アイヌ文化における「人間」と「カムイ」になぞらえて、「共存」「同種」「対等」ということを挙げています。シンオウ地方が、実際の北海道開拓のような歴史を辿ってきたかは果たしてわかりませんが、ひととポケモンとの対等な関係性は、前作のRSEよりも顕著に描かれているように思います。(アニメではピカチュウとサトシの第1話から語られ、ゲームでもDPt以後はBWのNやXYのAZやメガシンカ、SMのリーリエなどでより強いメッセージ性として語られていくものですね)

その「対等」の論拠として、DPtでは、アイヌ文化を元ネタに挙げて使われているということです。以下、それを元にして、アイヌの世界構造とシンオウの世界構造を比較していきたいと思います。

 

また、内容は少し脱線するのですが、アルセウスの映画配信限定イベントでこんなものがあります。

ポケモンこだわりブログ:更新終了 アルセウス DPtの図鑑とプラチナ限定イベント

このシンオウの成り立ちについては、あくまでこの自称哲学者の一意見ですが(ただ、おそらくシント遺跡イベントの人と同一人物)「同じ『こころ』を持つから、ひととポケモンが入れ替わったり結婚したりした」という論拠、何かしらの哲学論でありそうですね。アイヌでいうなら、「こころ=魂」の話に落ち着くでしょうか。「こころ」というテーマは、DPtにおいてシンオウ神話というよりは、アカギの理想の方でたくさん語られていた印象があります。

この辺りの話もレジェアルに期待!

 

おくりのいずみと送りの儀式

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こちら、殿堂入り後に214番道路からいける、かくれいずみへのみちを通った先に存在するおくりのいずみです。ここには、さらにもどりのどうくつが繋がっています。

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おくりのいずみのモデルは位置的に摩周湖。形状としても、同等のカルデラ湖であることが明らかです。霧の摩周湖というほど濃霧なことでも有名ですが、もどりのどうくつ内での霧深さに反映されているのかもしれません。

このおくりのいずみ、先述したシンオウむかしばなし①で、まさに「ポケモンの骨」が送られていた「水」そのものであると思われます。ここで、ひとは食べたポケモンの骨を洗い、再び肉体が戻ることを望んでいたのでしょう。

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もどりのどうくつ内での記述では、生者と死者とが交錯する場所であることも明らかとなっています。DPにおいては最奥にギラティナが存在し、捕獲することが可能です。

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ギラティナが棲んでいるのがやぶれたせかいだとして、「古代の墓場=もどりのどうくつ」でしょうか。今は使われていないという意味で、古代なのかもしれません。つまり、おくりのいずみは(死者)送りの泉、もどりのどうくつは(生者への)戻りの洞窟となり、かなり直接的なネーミングであるように思えます。

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また、ギラティナ捕獲後、もどりのどうくつの最奥を来訪すると、通過した部屋数に応じて、道具が手に入ります。「れいかいのぬの」「きちょうなホネ」「ほしのすな」の3つです。きちょうなホネについては、水で送られた骨そのものでしょう。ほしのすなに関しては、個人的に元ネタ通り、死んだ有孔虫の殻、つまり死骸イメージなのかなと思っております……。

れいかいのぬのについては、ここがシリーズ初出の道具でもあります。そもそもが専用道具なのですが、道具自体よりもこの道具によって進化するポケモンに着目したいところです。

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人を霊界につれていくポケモン、ヨノワール。その存在からしても、生と死の二つの世界が混じる場所にはあつらえむきと言えますね。

ギラティナは勿論、そこに置かれる3つの道具の全てが死に関わり、それを送る場所として存在している地。非常に曖昧であるとも取れます。

 

また、このようなシンオウむかしばなしで語られていたような送りの儀式は、北米の狩猟民族インディアン等ではよく見られるものなのですが、アイヌ文化にも考え方として同様のものがあります。有名なものだと、イオマンテでしょうか。

イオマンテは、ヒグマなどの動物の魂をカムイの世界へと送る儀式です。狩猟動物であれば、特にカムイがヒグマである必要はなかったそうですが、有名なのはヒグマです。初春、冬眠中の親グマを獲ったとき、その巣穴に仔グマがいた場合、その仔グマを生け捕りにして、2年程大切に飼い育ててから、村をあげて盛大な儀式を行って、仔グマを殺すことでカムイの世界に送り帰します。これは生贄ではなく、感謝したクマのカムイが再び人間の世界に訪れることを期待しているのです。

また、鮭の儀式としては、豊漁を祈って獲った鮭の頭をイサパキニという木の棒で叩くカムイチェㇷ゚ノミというものがありますが、十勝川流域のアイヌで、鮭の下顎骨をイナウと共に川に流す儀式が確認されています。*1

こちらのアイヌの伝承の少なさといい、おくりのいずみにおける送りの儀式については、イオマンテにおけるアイヌ信仰全体とインディアンモチーフから取られているのかなと思いますね。

 

さて、もどりのどうくつは、プラチナにおいて、やぶれたせかいとの出入口になっています。骨送りやヨノワールで示唆された、死者の世界。実質、シンオウ地方ではやぶれたせかいがその役割を担っているのではないかと思われます。さて、そのやぶれたせかいとは、一体何なのでしょうか。

 

やぶれたせかいとテイネポㇰナモシㇼ

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やぶれたせかいは、ギラティナの棲家であり、ギラティナがはっきんだまなしにオリジンフォルムという真の姿のまま存在できる場所です。ギラティナがここへ追い出されたという事実は図鑑に記述(またギラティナの由来はguilty(有罪の)+platinum(プラチナ)だという説)がありますが、このやぶれたせかいは、前述のゲーム内の話を参照するならば、死の世界です。

このやぶれたせかい、BDSPのイベントでも再現されていますが、特にプラチナをプレイして歩くとその異質さは顕著であり、時間も空間もなく、重力を無視していて、まるで180°反転しているような様子が見られます。(反転世界という名称は映画発祥)おかげで不気味さは漂っているものの、なぜ、やぶれたせかいという死の世界のモチーフを「反転」したのでしょう。答えは明らかです。

アイヌの死者の国が「反転」しているからです。

アイヌ世界における死の国は、ポㇰナモシㇼという名が付けられています。この死者の国は、人間世界のように山川や草木があり、死者の魂は、生前同様に季節の運行に合わせて暮らしています。しかし、この世が夜ならばあの世は昼、この世が夏ならばあの世は冬となり、すべてのものが逆立ちで歩いているなど、すべてがあべこべであるという小話が伝わっています。死者が来世で不自由しないように、夏に死んだ者には冬靴を履かせた上で埋葬したということもあったようです。

また、岩山の洞窟がポㇰナモシㇼの入口とされ、死者は、墓に建てられた墓標を杖として歩み、死者の国へと赴きます。このような洞窟に人間が知らずに入り込んでしまい、死者へと声を掛けても、死者から生者の姿は見えないそうです。

そしてポㇰナモシㇼの下は、テイネポㇰナモシㇼ(じめじめした最低の地獄界)となっており、ここは英雄神に退治された魔神生前に悪行を重ねたものが落ちるところで、落ちたものは決して再生することがありません。

なお、死者は永遠に地下世界で暮らすのではなく、地下のトンネルを潜った先に高山の山頂に出て、最終的には天界に落ち着くとの説もある、とのことです。*2

 

したがって、やぶれたせかいのモチーフは、アイヌの死後の世界であるポㇰナモシㇼしいては、地獄であるテイネポㇰナモシㇼであると推測されます。死の世界はもどりのどうくつから繋がり、その世界は反転し、罪を犯したギラティナとアカギが落ちるのです。(プラチナのストーリー展開上ではやりのはしら、バグ技ではてんかいのふえまで繋がっているのも面白いところですね)

 

とりあえずまとめさせていただきましたが、レジェアルで、さらなるアイヌ文化との関連、しいてはシンオウ世界の掘り下げを非常に期待しております。

記事は随時更新していきたいと思いますので、何か質問、意見等ありましたらお気軽にお寄せください。

 

【グノーシア感想】画面を越えるなら優しくして

※この記事は、PSVita・NintendoSwitch移植「グノーシア」を中心にしたADV等(ダンガンロンパシュタインズゲートなど)のネタバレを大いに含みます。グノーシアをクリアしていない方、その他のネタバレを避けたい方は、今すぐブラウザバックをお願いします。また、疑問や質問等がございましたら、是非コメントにお寄せください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ぐぁっ……グノーシアの(おもしろ)力を膝に受けてしまってなあ……。(満足顔)

SFタイムリープ人狼系ADV……どの要素も大好きで、大満足のまま真エンドまで駆け抜けてしまいました。リアル人狼が苦手な自分もサクサク楽しめましたね。レベリングのおかげでだいぶ救われました。

システムだけではなくストーリーにも心惹かれたんですが、考察するほどの論拠や実力が足りなく、考察記事をつくるほどには至れないな……と思ったので、今回は感想記事です。

逆転裁判ダンガンロンパなどの謎解きADV」「STEINS;GATEなどのタイムリープ」「ダンガンロンパV3などのメタフィクション」とグノーシアとの比較熱く語っていきたいと思っております。グノーシア以外の上記ゲームに関して極力核心的なネタバレは避けて書いたつもりですが、嫌な方はブラウザバックをよろしくお願いします。

 

 

謎解きADVとの比較

比較対象として「逆転裁判シリーズ」や「ダンガンロンパシリーズ」を挙げたいと思います。

逆転裁判123 成歩堂セレクション -Switch

逆転裁判123 成歩堂セレクション -Switch

  • 発売日: 2019/02/21
  • メディア: Video Game
 
ダンガンロンパ1・2 Reload - PSVita

ダンガンロンパ1・2 Reload - PSVita

  • 発売日: 2013/10/10
  • メディア: Video Game
 

円卓を囲んで話し合って嘘を見破る構図は、三作品に共通する要素です。逆転裁判は弁護士として被告の無罪を探り、ダンガンロンパはクロ(人殺し)の正体を探り、グノーシアは隠されたグノーシア(人狼)を探ります。謎解きADVが好きな自分としては、グノーシアも非常に満足いくものでした。

ただ、これらの二作品とグノーシアでは明らかに異なる点があります。二作品は「一つの結論に向かって謎を解く」のに対し、グノーシス「謎解き自体はアトランダム」であるのです。逆転裁判ダンガンロンパも、絶対的にその章での犯人は同じであり、主人公がその場においての正義であることも固定です。しかし、グノーシアは毎度犯人も味方も変わります。そして自分が犯人になることもあるのです。人狼ゲーム自体がそうですが、当人自体に罪はなく、あくまで役を与えられたにすぎません。その設定を逆手に取り、グノーシア汚染という形で作中の罪を対処することで、毎度の殺し合いをアトランダムに行うことが可能なのです。

そんなランダムな謎解きによって、謎解きがストーリーの補助になるのではなく、謎解きそのものがゲームの目的となっているのではないでしょうか。事実、クリアまでに何回人狼をやるかはプレイヤーに任されており、1ゲームも長くて15分程度です。(逆転裁判ダンガンロンパだと1裁判で2〜3時間は覚悟するので)

小さな謎解きを繰り返し、そしてその謎解きそのものが目的となっている。それが他の謎解きADVとは一線を画しているところではないかと考えます。

 

タイムリープ作品との比較

タイムリープについては、STEINS;GATE(シュタインズゲート)」と比較していきたいと思います。

STEINS;GATE - PSVita

STEINS;GATE - PSVita

  • 発売日: 2013/03/14
  • メディア: Video Game
 

めちゃくちゃ主観なんですけど、タイムトラベルものはシュタインズゲートが至高というか、ほかに整合性のとれている作品があまり無かったんですよね。「シュタゲを知ったら他のタイムトラベルものが楽しめなくなる」というのは大袈裟ではない気がします。シュタゲは、タイムトラベル作品では避けられないタイムパラドックスの解決がとにかくうまい。

例えば、過去へと遡ったら「二人の自分が存在する」という矛盾について、シュタゲもグノーシアも肉体ではなく、意識だけが戻るタイムリープを採用しています。他の人間の意識は巻き戻されて、主人公の意識だけが今のままま遡るため、過去の世界で主人公が二人存在することはありません。そもそも肉体は遡っていないので。

シュタインズゲートの世界では、並行世界が無限に存在しており、各世界線では一つの結末(大切な人の死など)が絶対的に決まっています。その運命から抜け出すために主人公は過去へのタイムリープで未来を改変し、望んだ未来のある並行世界に辿り着こうとします。

いわば、タイムリープ手段です。そもそもがタイムリープマシンという発明品ですし、「いつ」に遡るかを明確に決めることができます。シュタインズゲートの世界観は強烈な運命論です。その絶対的な運命を覆す唯一の方法が、タイムリープによる過去改変の結果の、世界線再構築なのです。(詳細は割愛)

 

対してグノーシアは、タイムリープというものは現象であり、いかにしてそのループから抜け出すかが目的となっています。ループの始点を意図的に決めることはできず、1ゲームが終わり、グノーシアと人間とバグのいずれかが勝った時点で、必ずゲーム開始時に遡るのです。

ループの原因は、ラキオが所持していた「銀の鍵」にあります。

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銀の鍵は情報収集を目的としています。なので、ループにおいてその始点を変えることはできませんが、自分の役職や人数などの条件を変えることが可能なのでしょう。(メタ的に考えると、様々な人狼を柔軟にやりやすくするためですが……)銀の鍵が何の情報を得たがっているのかは明確ではありませんが、作中では自分以外の14人のプロフィール(特記事項)を得ようとしていました。(セツの銀の鍵に主人公の特記事項もあり、またセツがマナンのことを知っていたため、主人公とセツでは他の13人の内容も違った可能はあります)

ラキオ曰く、銀の鍵を外してループを抜け出すには全ての特記事項を集め、扉を通り抜けて、誰かが向こう側から鍵を抜く必要があるそうです。ループで辿り着く並行世界と、扉の向こうの世界は異なるものなのか、同じものなのかはわかりません。(しかしマナン入りのククルシカに会えてしまっている時点で、扉の先も並行世界の一つに繋がっているだけなのかもしれません)

主人公とセツの銀の鍵の始点についてですが、これはどちらが先かあえて分からないようになっています。主人公とセツのループはアトランダムに進行しており、主人公とセツがそれぞれループを重ねたとしても、そのループ先が順に重なることはありません。セツの1回目が、主人公にとっての100回目というようになるのです。

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ラキオの言う、「疑うな、畏れるな。そして知れ。全ては知ることで救われる」という銀の鍵寄生の合言葉があります。

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その言葉を主人公ループ1回目の際に、セツが主人公に告げて銀の鍵を寄生させるのです。ここから、主人公のループが始まります。

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しかし、その際セツが指していた「昔、銀の鍵をくれた人」が主人公だと教えられます。

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そして事実、まだループしていない1回目の死にかけのセツに、主人公は銀の鍵を寄生させて命を救うのです。(セツの特記事項参照)この時点で主人公は数多くのループを経験しています。

つまり、セツを救うために銀の鍵を手渡した主人公は既にセツから銀の鍵をもらっていて、主人公に銀の鍵を手渡したセツは主人公に銀の鍵を与えられて救われたセツなのです。二人ともがお互いに銀の鍵を与えられているので、これは矛盾しています。それこそ、セツから銀の鍵をもらわない主人公でもいない限り。

そして最終的に、銀の鍵の扉について主人公が開けてセツが閉め、セツが開けてマナンが閉めることで互いのループは終焉を迎えました。(何でこんな複雑な閉め方をしたのか、主人公の二重存在については後述します)

 

さて、シュタインズゲートとグノーシアのタイムリープの仕組みについてざっくり説明させていただきました。グノーシアのタイムリープはこれに二重存在の話も絡まるので、シュタゲの方がシンプルで分かりやすいな〜とは思うのですが、グノーシアはタイムリープを全部体験できる」ため、タイムリープそのものをよりリアルに感じられる点が素晴らしかったのではないでしょうか。

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シュタインズゲート名(トラウマ)場面、無限サイクリング。

これは、シュタゲ主人公がある選択をして無限のループを繰り返している場面です。これは主人公が最終的に進んだ世界線以外での話なのですが、この他にもシュタインズゲートの作中や、またはシュタインズゲートゼロというシュタインズゲート本編のクライマックスの前日譚を描いた作品でも、プレイヤーには見えないところで主人公がめちゃくちゃタイムリープをしているのがわかります。

STEINS;GATE 0 - PS Vita

STEINS;GATE 0 - PS Vita

  • 発売日: 2015/12/10
  • メディア: Video Game
 

シュタインズゲートのプレイヤーは、タイムリープを繰り返す主人公を観測しているという距離感であり、タイムリープをする主人公に並走しているわけではありません。シュタインズゲートはあくまでタイムリープする岡部倫太郎の話であり、ADVというゲームの特性上、プレイヤー≠主人公という構図は尚更強調されていると思われます。(後述しますが、下手にプレイヤー=主人公を強調した方が物語は破綻するので、シュタインズゲートはこの距離感が最適であると思います)

対してグノーシアでは、タイムリープの体験を非常に意図的に設定されていると考えています。主人公とプレイヤーがどれだけ等しくタイムリープを並走できるかどうか。そこに重きを置かれて、ゲームそのものがつくられているのです。

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記念の100ループ。ちなみに自分は160ループでのクリアでした。

銀の鍵自体が非常に秀逸な設定(元ネタはクトゥルフらしいですね)だと思うのですが「他の人となりを知り、様々な人狼をプレイすること」がそのままループの終了に紐づいているんですね。最初は勝てなくても、14人の性格や戦い方を知ることで、どうやったら勝てるかが少しずつわかっていきます。(夕里子・ククルシカは真っ先に凍らせたい、しげみち・ラキオはどうせ勝手に凍るなど)

主人公はループすることで様々な情報を得たり、レベルが上がったりしますが、その各キャラの特性を踏まえて戦おうとするのは、紛れもなくプレイヤー自身の経験です。プレイヤーの判断や経験が、そのまま主人公の糧となるのです。限りなく、プレイヤー=主人公を狙って作られているのだと思います。タイムリープを主人公と共にプレイヤーが繰り返すこと自体が、ゲームクリアへと近づくような巧妙な構造となっています。なので、グノーシアではタイムリープすること自体に意味が生まれているんですね。

シュタインズゲートにおいて主人公のタイムリープが全部は描かれなかったのは、タイムリープそのものにストーリー上の都合と主人公の苦悩以外の意味が薄いからです。案外タイムトラベル作品で、数多のタイムトラベルを繰り返すものは少ないし、シュタインズゲートすら正確には主人公に並走しないのです。

実際に過去に遡りすぎて「あれ? 今回はこの人がグノーシアだっけ。これは前回だっけ?」と記憶の混濁が起きがちなのも、グノーシアのタイムリープがリアルということを物語っている気がします。「純粋たるタイムリープの体験」という意味でグノーシアは時間逆行作品において、非常に革新的であると考えられます。

 

メタフィクション作品との比較

 

最後に、グノーシアをメタフィクションと定義して他作品と比較していきたいと思います。

メタフィクションとは、作中の人物がその世界自体をフィクションと自覚した上で世界に存在していることを前提とした物語ジャンルのことです。それらの中でも、このブログにおいてのメタフィクション「作中の人物が、画面を超えてプレイヤーに話しかけてくる作品」と定義付けさせていただきます。

プレイヤーを責め、負のものと見做す作品として、個人的に思い入れが深いのがダンガンロンパV3です。

毎回、世界観自体のどんでん返しに定評のあるダンガンロンパですが、この作品の最終章では、今までのコロシアイ、また前作までの作品すらも作中劇であったと明かされ、作中のキャラクターが「殺し合いを好んできたファンのせいで君たちはコロシアイをしているのだ」と、限りなくプレイヤーに近い作中のファンを激しく否定します。

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厳密には、作中のダンガンロンパのファン≠プレイヤーではあるのですが、「ダンガンロンパのコロシアイを楽しんできた」プレイヤーがいる以上、作中ファンへの否定はそのままダンガンロンパを好んでいたプレイヤーに刺さったのではないでしょうか。

 

ダンガンロンパV3は、プレイヤーを明らかに敵視しています。つまり、プレイヤーのせいだとでもいうように仕向けるような展開を製作者があえて作っていることになります。これはゲームという媒体は能動性が強いということを逆手にとっているとも考えられます。全ての選択肢は自己選択であるため、やればやるほど、責められて詰られる。このように作られたメタフィクションは、プレイヤーを負の存在と見做すことも可能なのです。

 

さて、比較してグノーシアにおけるメタフィクションを解説するには、主人公の二重存在を紐解かなければなりません。

主人公とセツがループから抜け出そうとする最中、人間ともグノーシアとも違う「バグ」という存在に出くわします。バグは、宇宙そのものを破壊する存在です。なぜ、船内にグノーシアがいるのか、そしてバグが宇宙そのものを壊そうとするのか。それは全て主人公の二重存在によるものです。

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主人公とセツは、夕里子にコンタクトを取ろうとします。夕里子は主人公の認知にも働きかけられるため、ゲーム内のメタ的な役割を担っているとも言えますね。その夕里子から認知を正された、以下、バグラキオの証言です。

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つまり、船内のグノーシアは初めに主人公を消したらしいが、主人公は二重に存在するため、消されたにもかかわらず主人公は存在している。その矛盾を解消するために、バグが宇宙もろとも二重存在を消そうと働いているらしい。では、グノーシアが主人公を消していてどうにか宇宙の均衡が保たれているのならば「船内にグノーシアが存在しなかった場合、本当に宇宙は崩壊するのか?」その問い通り、主人公とセツはグノーシアが0人の平和な並行世界へと辿り着きます。

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束の間の幸せを振り切り、グノーシアに消されていない、もう一人の主人公の元へと向かいます。

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ここで、勿論宇宙崩壊シュレーディンガーの猫の証明を壊すように、箱を開けて二重に主人公が存在していることを互いの主人公が認識してしまったからです。

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主人公とセツは宇宙崩壊を起こさないために、グノーシアがもう一人の主人公を消したグノーシアが必ず存在する並行世界にしか飛べなかったのです。だが、グノーシアが消しているにも関わらず、主人公の歪みで生まれたのが「バグ」。(この辺は推察でしかないが、グノーシアに消されてもグノースのところに意識だけが飛ぶ仕組みなので、本質的にもう一人の主人公を消せていたわけではなかったのではないか、そのためにバグが生まれたのではないだろうか)

誰も消したくない、消されたくない。そんな理想の未来に辿り着けたが、ここでは主人公が二重存在してしまうため、宇宙そのものが崩壊してしまう。

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セツの言うように「皆が犠牲にならないこの宇宙でループを終わらせる」ためには、主人公の銀の鍵を満たし、このグノーシア0人の宇宙で扉を開ける必要がありました。そしてセツは、自分がもう一人の主人公を扉の向こうへと連れていって、鍵を抜くことを提案します。

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これで主人公の鍵はなくなって主人公のループは終わり、二重存在も解消されて宇宙も崩壊せず、さらに他の誰も死なない世界線にいられるということですね。ただこの場合、セツの存在はもう一人の主人公と共にいなくなってしまうことになります。そもそも、セツの銀の鍵はこの時点で埋まっておらず、この扉を潜る前のセツは「主人公に銀の鍵を渡していないセツ」であり、この扉を潜った先で、主人公に銀の鍵を渡さなければ因果が繋がりません。扉の先でセツはループを繰り返すしかないのです。

それでも、ループしていた主人公との記憶を無くしたくないと願うセツは扉の向こうへ消えてしまいます。他の13人に聞いても誰もセツのことを知りませんでした。

ここでノーマルエンドは終わります。二重存在はセツの自己犠牲により解決しますが、そもそも主人公がどうして二重に存在してしまったのか。その解決はありません。

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セツだけがいないタイトル画面。

さて、ここから真エンドに辿り着く方法について、勿論皆さんは知っていると思います。ニューゲーム始めて、主人公を起こしたセツに「映画」もしくは「釣り」の話をします。

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そこで、セツは主人公がループ時の記憶を有していることに気付き、ようやくセツの銀の鍵が全て埋まります。その銀の鍵をマナン(ククルシカ)に受け渡し、マナンが扉の向こうで鍵を抜くことによって、ようやくセツはループを抜け出すことが可能になるんですね。そして物語は真エンドを迎えます。

さてここで、セツは主人公の何に気付いたのかを抑えなければなりません。セツは主人公の特記事項についてこのようなことを述べます。

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主人公は「別の次元から、意識だけを繋いでいる」

さて、別の次元とはどこか。そして、そもそも主人公の銀の鍵は抜けたのになぜループできたのか。

それはプレイヤーである「あなた」自身がセツに会うために取った行動、そのことを指しているのです。「あなた」セツにもう一度会うために、NEWGAMEを押しましたよね? 

ここでセツの指している、別の次元とは「あなた」の住む、ゲームの外の現実世界のことです。ゲームを起動してボタンを押して選択肢を選ぶことで「あなた」はゲーム内に、意識をつなぐことが可能なのです。

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セツは、絶対に記憶を有するはずのない主人公がセツとの記憶を有していることで「プレイヤー」の存在に気がつきました。それが、セツの銀の鍵が気付くべき主人公の特記事項だったのです。

これはただの推察なのですが、そもそも主人公が二重に存在したのも、プレイヤーがゲームを始めたからではないでしょうか。主人公の存在はプレイヤーがゲームを始める前から存在しているようですが、主人公の身体を二重に存在させてグノーシアのように主人公の意識に寄生し、セツと共に歩んだのは紛れもない「あなた」だったのかもしれません。

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セツは最後に感謝を告げます。セツが歩みたかったのは、犠牲にしてまでも守りたかったのはプレイヤーである「あなた」との時間でした。

このセツの言う「君」とは「画面越しのプレイヤー」のことを指しているのでしょう。

つまりグノーシアは、メタフィクションにおける正の物語なのです。共にループを歩んできたセツに、あたたかい感謝を告げられて終わる。そんな救いの話なのだと思います。

 

これは本当に個人的な趣味なんですけれど、自分も好きでゲームをやっているので、ゲームをやったからには、やっぱり最後には「ありがとう」って言われたいなと思うんです。別にゲーム内のキャラクターは画面の外のプレイヤーのことなんて気にしなくてもいいんだけど、もしこっちを向いてくれるとするなら、どうか優しくしてほしい。一緒に歩んでくれてありがとうって言われたい。「わたし」もあなたと歩めて楽しかったから。

最後にセツがありがとうって言ってくれたから、グノーシアは本当にあたたかいゲームだったなと思うのです。このゲームをやってよかったな、と心から思っています。こちらこそありがとうございました。

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最後に製作者インタビューを載せておきます。

なぜ今になってPS Vitaで出たゲームが10点満点・高評価を獲得したのか?『グノーシア』には制作者がこだわる「プレイヤーとの信頼関係」があった――開発チーム「プチデポット」インタビュー

【FE風花雪月考察】「闇に蠢く者」の正体

この記事は、風花雪月の全4ルートと煤闇の章のネタバレを大いに含みます。クリアしていない人は今すぐブラウザバックをお願いします。また、疑問や質問等がございましたら、是非コメントにお寄せください。

 

 

 

 

 

 

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ファイアーエムブレム風花雪月、本ッ当に面白いですよね。( クソデカフォント )

いや〜面白い。自身のファイアーエムブレム歴は、スマブラforルフレルキナ参戦ムービーに釣られて覚醒を買って始めた程度のめちゃくちゃニワカなんですけどね。ゲームのシステムはとても楽しめたのですが、覚醒の結婚システムに「プレイヤーの選択次第で人体錬成(子作り)に対する責任を担わなければならないのか……」と発狂してしまい、その子作りシステムの継承でifの購入は見送ってしまった程度の、ファイアーエムブレムシリーズそのものへの愛着は薄い人間です。

 

そんな自分が、新作の風花雪月に手を出したのは「ストーリーに絶対的な救いが無い」という噂を聞いたためです。ファミ通の開発者インタビューでも「大団円ルートがあると、どうしてもそのルートが正解になってしまうから(中略)企画当初から入れるつもりはありませんでした」とはっきり明言されているように、ファイアーエムブレム風花雪月は、どのルートも等しくあり得る世界の話で、しかもそれを「プレイヤーの選択次第で決められてしまう」という自己選択における責任が付き纏うゲームである。誰かは救えるけど、みんなは救えない。そのやり切れなさがどこか現実臭くて、世界は無情である。

それは、風花雪月というタイトルからも顕著で、の章(金鹿√)、紅の章(黒鷲√)、銀の章(セイロス教団√)、蒼の章(青獅子√)という章タイトルに埋め込まれているように、風も花も雪も月も自然の事物で、生命のそのもの意志は無く、人間の力ではどうにも変えられないものです。(よく風花雪月と同じ意味と似た語感として間違えられる、「花鳥風月」という有名な言葉がつけられなかったのは、鳥では生命を意味し、人間が使役できてしまうためなのかもしれません)

個人的には、煤闇の章の「卒業式」にユーリスとハピが言っていたセリフが、ゲームの主題であるように感じています。

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人間の意思の介入ができない風花雪月が去りゆく「優しくない世界」「助け合って生きていくしぶとく、強かな人間」を描いた話なのではないでしょうか。

煤闇の章はこのように、他ルートではぼんやりと描いていた希望をはっきりとキャラクターが明言して終わりますし、本編では恐らくアルファルドが〇〇〇〇の〇〇を発見しなかったことになってるっぽいので、煤闇の章で描かれた希望が他の風花雪月ルートの虚しさをより助長しているようで個人的にはたまりませんでした。

風花雪月はサイコーの虚無ゲー。

 

さて、そんな風花雪月は良い意味での虚無ゲーで、どの人間にもそれぞれ譲れない正義があるからこそ、プレイ中内心こっそり思っていました。

「せっかくだし先生が闇に蠢く者について、生徒も教団も全員皆殺しするルートもやってみたい」

……え、思いませんでした? フェリクスを黒鷲で引き抜いて幼馴染と実父を殺させるプレイングをした人間なら少しは思いましたよね?

皆殺ししたいかどうかはともかく、全ルート通して敵として対峙した「闇に蠢く者(アガルタ)」陣営に寄り添った描写がどこにも無かったのは事実です。

紅花の章でラスボスとして対峙したレアともちゃんと支援会話が存在するし、銀雪の章では支援Sまでいけますからね。エーデルガルトもどちらかと言うと倒されるべきラスボスとしてイメージされたキャラクターであり、彼女とも支援会話と支援Sが存在している時点で、ある種、風花雪月は「ラスボスにも寄り添えるよ!」というゲームなのだと思います。

だからって、ソロンやタレスと支援Sが欲しかった〜という駄々を捏ねたいわけではないんですけど、彼らの動機、闇魔法、シャンバラなどの存在については謎に包まれたままのものが多い。

煤闇の章もアビス(=深淵)という名前をつけられているおかげで「これは闇蠢共闘皆殺しルート!?、!?!」と、期待した人は多かったのではないかと思います。自分もその一人でしたが、煤闇のストーリーでは灰狼の学級のメンツとセイロス教団側の掘り下げがメインに据えられ、寧ろ銀雪の章をやり直したくなったのではないでしょうか。

闇に蠢く者については投げっぱなしで、このまま謎のままか〜と若干の落胆を覚えて煤闇の章を終えた……そんなプレイヤーにどうしても伝えたいことがあって、この記事を書きました。

 

「煤闇の章をクリアした人間、今すぐ第二部のデータにてアビスにいる顔役に名声値6000ptを与え、『書庫を整理する』を解放してクエストをクリアして、アビス書庫の書物を全部読め」

 

※ここから先が核心のネタバレになります。閲覧は自己責任でお願いします。このじわじわとした恐怖と感動は、ぜひゲームで味わってほしい。よろしくお願いします。

 

 

 

 

ここからはアビス書庫の書物と全ルートの話を交えて話していきます。

 

ゲーム内で、闇に蠢く者(アガルタ)の正体の掘り下げがなかったのは「する必要などなかったから」というのが、この記事で提唱する考察です。

つまり、闇に蠢く者の正体とは「我々現代人のような科学を有するホモ・サピエンスのような者であり、「わざわざその技術の背景や原理を説明しなくともプレイヤー自身が最も慣れ親しんでいてわかるため」ではないか、というメタフィクションを交えた存在である可能性を提唱します。

 

 

かつて使われていた「月」という暦

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現行のフォドラの暦は「節」であり、フォドラの人々は節という区分を疑問なく自然に受け入れています。

ゲーム内でも節ごとの区切りがこれと言うほど強調され、我々プレイヤーも"この世界では暦は節と設定されているものだ"と理解していたはずです。

が、実はかつての暦が「月」であったことがアビス書庫の書物によって明かされます。しかも、その起源が神代に答えを求めなければならないと思われるほど古いものである、ということまで。

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この後のページで、節という暦を制定したのがアドラステア帝国初代皇帝ヴィルヘルムであり、セイロス教を広めるためだとか、アドラステア帝国の権威付けだとかの理由が、書物の中には推測で語られています。

6ページ目で「主(ソティス)の意向で暦を変えることを預言者セイロスから伝えられたヴィルヘルムが制定するに至った」とありますが、ソティスからレアに何かを伝えた、という描写が全ルートを通して薄い(本編ソティスが記憶喪失であるため勿論断定はできないが)ので、レアの独断でセイロス教を広めるためにヴィルヘルムに進言した可能性の方が高そう。(レアがセイロス教を広めるためにまるで手段を選ばないことは、この後の虫大全でも説明します)

また、これはゲーム本編ではなく、現実世界の話なのですが、古代エジプトには「ソティス暦」というものが存在しています。

紀元前2000年頃の古代エジプトの人々は、ナイル川氾濫の時期を正確に把握する必要があり、地球の公転周期に基づいて、1ヶ月を30日とする12の月と年の終わりの5日の安息日によって1年を365日と規定する太陽暦、通称「エジプト暦」を運用していました。しかし、このエジプト暦においては、実際の太陽の運行と暦のズレを補正するために現在では約4年に1度設けられる「閏年」の概念はありませんでした。その代わり、ナイル川の氾濫の時期に、日の出前の東の空に観測される恒星シリウスが東天へ出現する日を元日と定め、元日が年ごと移動していく移動年と呼ばれる暦法が取られていました。

恒星シリウスの観測とナイル川の氾濫の時期を基準とする、閏年の存在しない古代エジプトにおける太陽暦(エジプト歴)は、閏年の存在する一般的な太陽暦(現行のグレゴリオ暦等)と区別して、恒星シリウス古代エジプトにおいて豊穣の女神として神格化された名前、ソプデトのラテン語読みにあたる「ソティス暦」という名で呼ばれていたそうです。

紀元前45年から1582年まで施行されたユリウス暦、それ以降から使われている現行のグレゴリオ暦には、4年に1度の閏年(2月29日)が存在しますが、ソティス暦は等しく毎月が30日まで存在するので、2月は他の月と同等に30日まで存在し、2月29日は閏年としては存在しません。

ここで、フォドラの「節」が用いられている2月のカレンダーをそれぞれ確認してみます。

↓白雲の章

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↓蒼月の章(5年後)

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白雲の章カレンダーにだけ、2月29日が存在しています。閏年は約4年ごとであり、白雲の章と蒼月の章で5年間経過しているので、両者に2月29日が存在していないということは、フォドラの節の暦で用いられているのは、現実世界でのソティス暦ではないということが明らかです。恐らく、ユリウス暦グレゴリオ暦でしょう。(五年の経過だけではどちらかを判断することは難しい。わかる人がいたら教えてください)

ちなみに、フォドラの世界で大地球体説はまかり通っているようです(ガルグマク2F書庫の地球儀?参照)

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このフォドラが存在している惑星はそもそも地球なのか、という検証も必要ではあるのですが、太陽と地球間のような公転周期でないと、1年は365日にならないので、フォドラがあるのも地球に似たような惑星なのでしょう。流石に作中で「地球」というワードは出てきてませんし。「太陽」については日向コンスタンツェが「あの太陽が私を暗い気持ちにさせるのですわ……」と太陽を太陽だと認識するような発言をしています。

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また、ペトラアッシュ支援A +でもペトラがフォドラ語で「太陽」とはっきり口に出しています。

「月」に関しては、ヒューベルトベルナデッタ支援Cで、ヒューベルトが「月夜」と明言しています。月も月として認識されてるっぽい。

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ともかく、節という暦はアドラステア帝国の成立と共に変えられたものであり、それ以前は起源すらわからない「月」という暦を使っていたことが、この書物からは明らかになりました。

 

 

消された「科学技術」

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アビス書庫の中でも、特段異彩を放つ「フォドラの虫大全」を読んでいきます。この書物では暦どころではなく、レアが特定の科学技術を隠そうとしていた事実がありありと記されています。継ぎ接ぎされた表紙からして、いかにも怪しい。

1.望遠鏡

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レアは、まず望遠鏡のようなものを禁じていたそうです。

「敵陣の把握による戦争の激化」

「遠方からの狙撃が容易に」

確かに、望遠鏡が開発されてまもなく軍事利用された、という現実の歴史はあるのですが、この辺りはロングボウや遠距離魔法でいくらでも代替できてしまっていますね。

「天の観察による主の神秘性の減退」

恐らくこの辺がレアの本音でしょう。節の暦の制定もそうですが、レアはセイロス教の布教を物凄く重視していています。また、この文章からは「望遠鏡で観測できてしまう天の範囲内に主がいる」ということが暗に示されています。もちろん、主とはソティスのことでしょう。(主が天のどの辺りに位置するかは後述します)

 

2.石油

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石油らしきものの利用を禁じた、というだけでかなりキナ臭い内容ですね。どうしてレアは石油の使い方を知っているのだろうか……。

「誤って使用しての事故死」

「魔法を使えない者の戦略的利用」

「争奪による対立の発生」

石油が現代にもたらす恩恵は、我々の知る限りです。工場や家庭などの熱源、自動車や船舶、飛行機などの動力源、 プラスチックなどの化学製品の原料と多岐にわたって使われています。

「誤って使用しての事故死」が明らかすぎる建前だとして、「魔法が使えない者」「争奪」という理由に着目してみます。魔法が使えない人間が石油を争奪する、というのは果たしてフォドラの人間で起こる戦争を想定した発言なのでしょうか。

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これはガルグマク二階の書庫資料ですが、ダスカーのことが明記されています。ダスカーは現在クレイマン伯爵が統治している半島(外伝:弱き者の戦い参照)なので、フォドラ地図に照らし合わせると明らかに海に面しています。(青丸で囲んだところ)

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この海に面するダスカーで「珍重な鉱物」が見つかるという噂は非常に気になるところ。

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また、ドゥドゥーアッシュ支援Bでドゥドゥーが語るダスカーの特徴として「森が多い」「鍛治と漁が盛ん」というものがあります。ドゥドゥー自体も特に魚料理が得意らしく、塩の効いた料理をアッシュに対し、嬉しそうに振る舞っています。

さて、現実世界における石油の源についてですが、石油のもととなっているのは、海や湖で繁殖したプランクトンや藻などの生物体の死骸であり、それらが土砂とともに水底に堆積して岩石になる途上でケロジェンという高分子化合物が生まれ、それが熱分解したものが石油となるそうです。つまり石油の生成には、海や湖などの水辺が必須であるそうです。カスピ海黒海ペルシャ湾付近に石油産出国が多いのは、その条件を満たしているからだと考えられます。

現実の石油と、フォドラで抹消された石油っぽいものが同等の成分を有しているかはわかりませんが、現実の石油の産出地としてダスカーという土地は適しているのかもしれません。

つまり、貧しい土地ファーガスに石油王ディミトリがワンチャンあったんじゃないか……とよくわからない夢を抱いてしまいます。ファーガス神聖ドバイ……裕福になったファーガスでイングリットに美味しいものをたらふく食べさせてあげたい……。

そんなもしもの未来は置いておいて、つまり「魔法が使えない者」が「ダスカーにある石油」を「争奪」しようとした可能性があるということですね。少なくとも、ドゥドゥーらダスカーの民はおろか、ファーガス王のディミトリすら燃える液体である石油を燃料資産として活用・認識しているような様子はありませんでした。ダスカー襲撃。ダスカーの悲劇。どこかで聞いたような話だなあ(すっとぼけ)。

 

3.活版印刷

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「誤った情報や悪意のある噂が流布される危険」

「字の読めない平民にとって無益」

「教会同士の対立が悪化する恐れ」

この記述を見た途端、「レア、頭良いしめちゃくちゃ怖!!」という感想が湧いて出ました。事実、レアはツィリルに読み書きを教えていません。(ツィリルリシテア支援参照)掃除や肉体労働についてはしっかり教えているのに……。

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このレアの所業で何が怖いって現実の活版印刷発展が「宗教における教会の権威を下げた」という歴史的事実があることなんですよね。

かつて書物は、手書きによる手写本か、木版印刷が主流でしたが、1450年頃、ドイツ人のヨハネス・グーテンベルクが、金属製の活字を作り印刷するという活版印刷を完成させます。グーテンベルクは「グーテンベルク聖書」といわれる聖書を印刷、刊行します。このグーテンベルク聖書自体はあまり普及しなかったのですが、この「聖書を印刷して頒布する」という手法を最大限利用するのが、のちに宗教革命を成し遂げるルターです。

当時のキリスト教の聖書は、教会が所有することが一般的であり、信者はその聖書を聖職者が読み上げるという形でしか神の言葉を聞けませんでした。そうやって教会が独占するのみであったラテン語の聖書が、ドイツ語に翻訳・刊行され、活版印刷によって安価な価格で民衆に頒布されて読めるようになってしまいます。活版印刷における新約聖書の普及、さらにルターは自分の著作を刊行することによって、自らの主張を民衆に広げることに成功しました。当時1500万人いた神聖ローマ帝国の大半の人々は読み書きができませんでした。そんな時代にも関わらず、ルターの聖書は100万部印刷され、大ベストセラーになります。活版印刷の技術がなかったらルターの思想は広がることはなく、宗教改革も起こり得ませんでした。(この辺の活版印刷と宗教への影響についてはぜひ東京都文京区にある印刷博物館に行ってほしいんですけど……)

フォドラの書物が高価であることは、アッシュとの支援会話からも伺えます。

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薬代に匹敵するくらい高い本代。

このような本の高価さから、フォドラに活版印刷は普及しておらず、恐らくこれらの本も手写本だと思われます。アビス書庫の本も手書きと思われるものが多く見られました。

レアに先見の明があったのかはわかりませんが、セイロス教の権威を守るという意味で活版印刷を潰すということは極めて効果的であったと思われます。ツィリルに識字を教えていないのも恐らく意図的なのかもしれません。

レアの意図はともかく、そもそもレアが潰した「活版印刷を開発したのは誰か」という疑問が残ります。

 

4.医学

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「遺体を辱める行為が死者への冒涜」

「解剖がなくとも白魔法の発展により解決」

「信仰を必要とする白魔法に医学が勝ることがあれば教団の地位が揺らぐ」

どう見てもこれは、レア自ら施した禁忌がバレるのを防ぐためですよね。他人には医学を禁止しながら、自分はゴリゴリにやっているという……。

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↑こんなん胸切り開かれたら一発でバレるわ

医学と魔道の治療の違いについては、白雲の章、赤狼の節の散策時のマヌエラも言っています。

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ここで語られる医学についても、解剖についての言及はありません。対して白魔法は、人間の素の治癒力を高めるような効能があることがわかります。外からのウイルスや先天的な病気は治せなさそうですね。

 

以上、4点が「フォドラの虫大全」によって、抹消されていたことが明らかになった「科学技術」です。これらを統制したレアの目的は、セイロス教の浸透だとしてそれ以前に、「望遠鏡」「石油」「活版印刷」「医学」これらを元々作っていたのは誰だ、という話。それは果たしてフォドラ人なのでしょうか。

さてここで、闇に蠢く者たちの拠点「シャンバラ」ついての黒鷲学級と金鹿学級の反応を引用します。

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「古い感じなのに新しい感じ」「フォドラの様式とは違う」「見たことがない」「暮らしたくない」など散々な言われようです。

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↑シャンバラにある「△」の中の文字(他にも明確なロシア語とかがあるらしいですが未確認です。そのうちシャンバラに潜ります)

フォドラの人々には、まるで見覚えのない文明がシャンバラには確立しているようです。そして闇に蠢く者の専売特許といえば、「闇魔法」「光の杭」ですが、これらについてよ掘り下げたいと思います。

まず闇魔法について。そもそもの魔法陣が違います。

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↑闇魔法

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↑黒魔法

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↑白魔法

信仰を基にした、黒魔法と白魔法の魔法陣はソティスが「天刻の拍動」を使う時に空中に出た魔法陣に酷似しています。中央にある炎の紋章が無いくらい……。前述したように、信仰によって白魔法が使えるということは、ソティスへの信仰、もしくは血がそのまま白魔法や黒魔法を使える力生み出している可能性があります。

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対して闇魔法は、そもそも空中ではなく地面に生成されると共に、魔法陣の形もまるで違ったものとなっています。そして、ダークビショッブ・ダークメイジ等の闇魔法試験パスを使わずに闇魔法をレベルアップで覚えるキャラクターは「闇に蠢く者陣営」の他、「ヒューベルト」「イエリッツア」「エーデルガルト」「リシテア」「ハピ」の5人のみとなっています。この中で、エーデルガルトとリシテアとハピの3人は作中で「人体実験されました……」と描かれているので、闇に蠢く者たちは人為的に実験を行うことで闇魔法を使わせることができるのでしょう。逆に、闇に蠢く者たちは黒魔法や白魔法を使いません。(蒼月の章でアランデル公として対峙するタレスを除く)ソティスの加護が白魔法や黒魔法に必要ならば、その血を持たない闇に蠢く者たちが白魔法と黒魔法を使えないのも納得がいきます。

すると、ヒューベルトとイエリッツアも人体実験されたということでしょうか。否、そういう記述はなく、恐らく闇に蠢く者からの技術提供程度に収まっているのではないでしょうか。押し付けられた闇魔法というよりは、利害関係の一致の上で闇に蠢く者の技術である、闇魔法を使わせてもらっているという印象を受けます。(ヒューベルトは闇に蠢く者のことめちゃくちゃ嫌いですし)

ここで銀雪の章と翠風の章の帝都アンヴァル戦後にのみもらえる、ヒューベルトの手紙に着目します。

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「魔道」を感知してシャンバラを割り出していた余りにも有能すぎるヒューベルト。

この光の杭、結局は教団でも帝国でもなく、闇に蠢く者たちの仕業ということは明らかなのですが、その原理はかなり謎めいた物体です。闇魔法を原動力として動いているのはシャンバラでのタレスの光の杭大量発動からもわかりますでが、じゃあ、そもそも闇魔法って何だ、という話です。光の杭の発する魔道の感知自体は、ヒューベルトだけでなくどうやらイエリッツアも可能である様子。

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よく見ると死神騎士の持つ三日月の鎌には、闇に蠢く者のマークがあります。

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これは飛来する光の杭を指差しで教えてくれる親切なイエリッツア。

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光の杭自体にも、闇に蠢く者のマークが存在しています。

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光の杭、と称される割に「ゴリゴリの鉄製か?」と思わせるような強固な光の杭そのものの造り、そして無残に破壊されたアリアンロッドの都市の光景にどこか既視感があるような気がします。

これ、ミサイルを使った都市破壊じゃないか?

もし「光の杭≒ミサイル」だと仮定した場合、ヒューベルトの光の杭逆探知にも理由が生まれます。ヒューベルトが行ったのは闇魔道の感知、つまりはレーダーでの逆探知ではないでしょうか。

Dr.STONEというWJ連載中の漫画(人類全員が石化して3700年が経過した世界で科学技術と人類の復興を目指す物語)があるんですけども……

Dr.STONE 11 (ジャンプコミックス)

Dr.STONE 11 (ジャンプコミックス)

  • 作者:Boichi
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2019/07/04
  • メディア: コミック
 

Dr.STONE11巻の漫画内に、GPSとレーダーの開発についての描写があります。曰く、GPSについては、人工衛星もしくは地上の巨大灯台から強力電波を垂れ流すことで位置測定することができ、またレーダーについては、真空管に通した水晶に電圧をかけることで見えない敵を感知することができるそうです。詳しい仕組みについては正直門外漢なのでわからないのですが、ちゃんとした現代文明が確立されていないDr.STONEのような滅びた世界でもGPSやレーダーは作成可能であるらしいのです。つまり、ヒューベルトが執念によりレーダーを開発して、エンジニアヒューベルトとして闇に蠢く者の根城を突き止めた……という可能性が無きにしもあらず。

これら含めての憶測で申し訳ないですが、「闇魔法」が現代の「科学技術」に匹敵するものを発展させたもので、それらを利用し暗躍しているのが、闇に蠢く者たちなのではないでしょうか。かつて「月」という暦を使い、「望遠鏡」「石油」「活版印刷」「医学」らを駆使した現代人に極めて近い「闇に蠢く者」という人種が、フォドラの地底シャンバラで暮らし、女神への復讐を誓っているのではないでしょうか。

 

闇に蠢く者とソティス

さて、そこで闇に蠢く者の動機についてです。闇に蠢く者の遺恨は、レアではなくソティスに向けられています。レアやセテスの眷属たちは闇に蠢く者についての事情を殆ど知りません。

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また、タレスたちはソティスのことを凶星と呼び、フォドラ人のことをと呼びます。

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絶妙に噛み合っていないクロードとタレスの会話。

ここで、白雲の章、赤き谷ザナドについての記述を思い返してみます。

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レアが語る赤き谷ザナドに降り立った女神ソティスの伝説と、明らかな既視感がある女神ソティス本人。この赤き谷ザナドについては、ソティスの外伝「赤き谷の冒険譚」でも再来することになります。

ここの赤き谷ザナドの課題出撃後、級長ごとに言うことがまるで違うのですが、エーデルガルトとクロードの発言がそれぞれ興味深いです。

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ここの選択肢については「すでに滅んだ民族」「まさか……地底人?」のどちらかで好感度が上がります。「気が遠くなるほど太古に存在し、そして滅んだ」という言い方は、シャンバラを彷彿とさせます。恐らく、この赤き谷ザナドでは、かつて闇に蠢く者たちが暮らしていたのではないでしょうか。

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また、クロードは赤き谷の「」について着目しています。クロードはここで連想される赤いものについては思い当たりません。しかし、ここで思い出してほしいのが、白雲の章の守護の節でザラスから生還した、ベレト(ベレス)とソティスの合体シーンです。

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f:id:sh20230101:20200216220626j:image降り立つ赤い凶星。

「星」とありますが、ソティスはそもそもがシリウスを意味する言葉です。(ソティス暦が恒星シリウスを基にして制定されたことは前述しました)

作中でのソティスとシリウスの因果性はシリウスを見上げて」という曲名にも顕著です。イベントだとちょうど「赤き谷の記憶」などのソティス関連の掘り下げの時に流れるBGMです。(このメロディのそもそもがナバテアの歌のアレンジではあるのですが……)

主が天から見下ろしていたという事実も、「ソティス=シリウス」と仮定すれば辻褄が合います。

また、現実のシリウスについて、現在のシリウスは白色の星ですが、かつて地球上で赤く観測されていたという伝承も残されています。赤いシリウスについては本当に様々な諸説があり、その原因を断定できません。が、赤いシリウスがあったかもしれないという現実の伝承から着想を得て「赤い凶星=シリウス=ソティス」というモチーフが風花雪月では狙われているのかもしれません。

また、ザナドが赤き谷である由来として、翠風の章のレアがネメシス戦での「血」を連想して「赤き谷」になったのだと言っていますが、

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もちろんレアはネメシスを悪だと主張するので、セイロス教が広く布教した結果、伝承として「血=赤」だと伝わったのは勿論あるとは思います。が、それ以前に赤い凶星ソティスが降り立ったため、赤き谷となったのではないでしょうか。そもそもザナドに暮らしていたのは、闇に蠢く者が先なのでは?

ここでアビス書庫の「世界破滅伝奇」を参照します。

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この書物は、闇に蠢く者側の手記だと思われます。ティニスで目覚めた「神ならざるもの」に対抗するため、光の柱を地に立て、地の底(シャンバラ)へと逃げ、それでもなお復讐を誓う人種といえば、闇に蠢く者以外には考えづらいです。この書物における「人」とは、フォドラ人ではなく、闇に蠢く者のことを指し示しています。光の杭(ミサイル)を打てる、闇魔法(科学技術)を使える人間です。ならば、闇に蠢くものを追いやった、「神ならざるもの」と「獣」は果たして何なのか。

ティニスは、エジプト初代王朝の首都の名前と同じです。そして、そのエジプトではシリウスを目印にして暦が刻まれていました。これは現実の話であり、風花雪月のゲーム内に適応される設定ではありませんが、恐らく意図的につけられています。

つまり、それまでザナドで近代文明を築いてきていた闇に蠢く者たちは、突如ザナド(ティニス)に降り立った赤い凶星ソティス(神ならざるもの)によって報復されて、地の底に追いやられ、そこからの復讐を図っているのではないか?

 

ここで、ファイアーエムブレム風花雪月冒頭の「復讐」 のムービーをぜひ見返してみてください。特に後半部分です。

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「お母様……」と呟くレアの手には、紋章石の埋まった天帝の剣(ソティスの心臓と骨)が握られています。ここから突然、タイムスリップのような演出が入ります。風花雪月におけるタイムスリップとは天刻の拍動であり、拍動、つまりは心臓(=炎の紋章石)が存在してる場合に使えるのでしょう。だからベレト(ベレス)も天刻の拍動が使用可能であったと思われます。

↓猿(?)のようなシルエット
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↓ザナドに降り立つソティスらしき姿
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↓帆船
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↓フォドラの世界観に似つかわしくない近代的な高層ビル群
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その全ては闇に包まれ、目覚めてこちらに呼びかけるソティス。
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「おぬし そこで何をしておる?」

このムービーをそのまま受け取ると、この回想はソティスの記憶であるということでしょうか。天帝の剣であるソティスが見た夢、それは類人猿から進化した人類がいて、その人類はソティスと邂逅し、帆船を開発し、高層ビル群を建設している。しかし、それらは現在のフォドラには既に失われている技術です。

さて、このムービーにおける「復讐」とは、誰の何に対しての復讐だったのか。金鹿学級を受け持ち翠風の章をクリアして、「なるほど冒頭のムービーはネメシスとセイロスの因縁と互いの復讐の話だったのか」と納得する、そのネメシスvsセイロスの構造自体が、そもそもの代理戦争だったのではないだろうか。

科学技術を駆使する極めて我々現代人に近い存在を、凶星ソティスが一度滅ぼした。(滅ぼした理由は、「世界人類伝奇」にもあるように「命の血を流しすぎたから」なのかもしれない。ミサイルが現存するのなら、ソティスが怒ったのは恐らく戦争に対してだろう)そしてソティスの血を繋いだ、紋章をもつ「獣」たちが再度支配した世界が、風花雪月におけるフォドラである。

高層ビル群をつくれるまでに見事発展していた文明を滅ぼしたソティスという神ならざるものに対する憎しみ、つまり「闇に蠢く者からソティスに対する復讐、もしくはソティスから闇に蠢く者への復讐」が、この冒頭の「復讐」ムービーでは暗示されていたのではないでしょうか。

「おぬし そこで何をしておる?」というソティスからの冒頭のメッセージも、ある種、闇に蠢く者に似た我々に向けられたメタ的なメッセージとして受け取ることも可能ではないでしょうか。以下、ソティスとの支援Sです。

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こちら↑が紅花の章。それ以外の章が↓

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天帝の剣を作ってネメシスに手渡したのは闇に蠢く者であるし、ソティスの骨と心臓から武器をつくることはできたが、心、即ち魂まではつくれなかった。勿論これはレアとも同等ですが、「死者の魂はつくれない」という点で、闇に蠢く者と我々現代人の類似点を見出してしまいます。たとえ心臓が砕かれても、ソティスの魂は心の中に存在しているのです。

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闇に蠢く者≠現代人ではあるし、プレイヤー≠ベレト(ベレス)ではありますが、かつて科学技術に溺れた闇に蠢く者を見限ったはずのソティスと、その科学技術の世界を知っているプレイヤーが動かすキャラクターが共にあるというエンドが存在することは、ある種、神と人間との緩やかな融和なのかもしれません。

風花雪月というゲームに絶対的なひとつの救いはありませんが、闇に蠢く者を現代人のようなものと仮定した場合でも、ソティスのような神の理不尽が降り注ぐ「優しくない世界」「助け合って生きていくしぶとく、強かな人間」の姿を描いているように思えます。

この風花雪月の主題は現実世界にも共通するところがあり、そんな現実に近い無情さや理不尽をリアルに描いているからこそ、ファイアーエムブレム風花雪月はひどく魅力的に映るのかもしれません。

「闇に蠢く者」が我々に近しい者であるとして、我々がこうやって生きる理不尽な現実が、ある意味での風花雪月の5つ目のルートなのかもしれませんね。

自分史ゲームメーター

長年お世話になってきたゲームメーターが閉鎖してしまったので、やったゲームをメモする場所としてここを開設しました。ただの自分用メモです。

※既…既プレイ(クリア済み) 積…積みゲー(未クリア)

【所持ハード】

ゲームボーイミクロ 3DS ゲームキューブ Wii U switch/PSvita PS3

 

【MOTHER】

既:MOTHER MOTHER2 MOTHER3

 

星のカービィ

 

既:初代 夢の泉 2 SDX 3 64 鏡の大迷宮 ドロッチェWii TDX ロボボ スタアラ/夢の泉DX USDX 20周年スペコレ/ピンボール ボール ブロックボール きらきらきっず コロコロ エアライド タッチ 毛糸 あつめて ファイターズZ デデデでデンZ スーパーレインボー/ハンターズZ

 

ポケットモンスター

 

既:赤緑 金銀 RSE DPPt BWBW2 XY SM USM 剣盾/FRLG HGSS ORAS BDSP/ポケモンスナップ ポケモンピンボールルビー&サファイア ポケモンダッシュ 乱闘!ポケモンスクランブル ポケモンバトルレボリューション ポケパークWii Newポケモンスナップ/ポケモンレンジャー光の軌跡/青の救助隊 時の探検隊 空の探検隊 マグナゲート 超不思議のダンジョン/名探偵ピカチュウ

積:VC赤 黄 OR/光の冒険団

 

ゼルダの伝説

 

既:時のオカリナ 夢をみる島DX ふしぎのぼうし 4つの剣25周年 スカイウォードソード ブレスオブザワイルド

積:ムジュラの仮面 神々のトライフォース ふしぎの木の実大地の章 時空の章 初代ゼルダの伝説 リンクの冒険 夢幻の砂時計 大地の汽笛 マイニンテンドーピクロストワイライトプリンセス 夢を見る島リメイク

 

スーパーマリオ

 

既:マリオギャラクシー マリオギャラクシー2 スーパーペーパーマリオ newスーパーマリオ マリオテニスアドバンス マリオカート7 8 マリオパーティ5/メイドインワリオ あつまれ おどる さわる 俺/ヨッシーアイランド 万有引力

積:オデッセイ

 

ファイアーエムブレム

 

既:覚醒 風花雪月

積:聖魔の光石 封印の剣 外伝 エコーズ ♯FEencore

 

【その他任天堂

 

既:スマブラ64 スマブラDX スマブラX スマブラfor/Splatoon/新パルテナ/カエルの為に鐘は鳴る/スペランカー/エキサイトバイク/おいでよどうぶつの森 街へいこうよどうぶつの森 とびだせどうぶつの森 あつまれどうぶつの森/ハコボーイ! ハコボーイ!もうひとハコ/立体ピクロス 立体ピクロス2/いきものづくりクリエイトーイ/新絵心教室/トモダチコレクション トモダチコレクション新生活/nintendogs nintendogs+cat/Wii sports Wii/sportsリゾート WiiパーティWiiでやわらかあたま塾/伝説のクイズ王決定戦/クラブニンテンドーピクロス

積:ゼノブレイド/Splatoon2/メトロイド メトロイドフュージョン/パルテナの鏡/さよならハコボーイ/マーヴェラス/任天童子

 

ダンガンロンパ

 

既:ダンガンロンパ スーパーダンガンロンパ2 絶対絶望少女 ニューダンガンロンパV3

 

逆転裁判

 

既:逆転裁判 逆転裁判2 逆転裁判3 大逆転裁判 大逆転裁判2

積:逆転裁判4

 

【レイトン】

 

既:悪魔の箱 最後の時間旅行 魔神の笛 奇跡の仮面 超文明Aの遺産/ミステリージャーニー

積:不思議な町

 

妖怪ウォッチ

 

既:妖怪ウォッチ

積:妖怪ウォッチ2真打

 

STEINS;GATE】 

 

既:STEINS;GATE STEINS;GATE0

 

【テイルズ】

 

既:アビス ハーツ

積:シンフォニア

 

ドラゴンクエスト

 

既:Ⅳ Ⅺ 

積:Ⅸ ⅪS

 

【その他ゲーム】

 

済:すばせか/たまごっちのぷちぷちおみせっち/とっとこハム太郎2 3 4/さくらももこのウキウキカーニバル/グノーシア/大神

積: キングダムハーツ/ICO ワンダと巨像 rain/ペルソナ3 4 5/クロノ・トリガー/ショベルナイト/リズム怪盗R/ソニック/Undertale

 

【欲しいゲーム】

 

FF9 FF10/テイルズオブエクシリア 2/Fate/staynight/Fレイ逆 逆転検事12 ゴーストトリック/トマトアドベンチャー/十三機兵防衛圏